EGO-WRAPPIN’ LIVE "merry merry" 10/7 @なんばHatch

大阪2daysの2日目。ツアー全体でも3日目。『merry merry』をそんなに聴き込んで行った訳じゃないからどんなもんだろと思っていたけど、まあ、その方が純粋に実力がはかれるかな、と思ったり。

ドリンク片手に紗幕に写し出される、クルクルと色と焦点を変えるチープなライトの動きを眺めながら開演を待つ。私はこの時間がとても大好き。純粋にその時間を待つためだけに過ごす(私はLiveにはほとんど一人で行くから。)無駄な時間。クラシックでもロックでもジャズでも芝居でもジャンルは何でも、その妙な期待感に包まれた時間の中に身を置いていると、なんだか奇妙に笑い出したいような衝動にかられる。(まあ、ばっさりあっさり言えば「テンションが上がっていく感じ」なんだろうな。)


エゴのライヴは初めてだったし、そんなヘヴィーリスナーじゃないから前知識はほとんど無い。今までの作品を一通り聴いた事があるくらい。


ヴォーカルの中納良恵という人は完全に「パフォーマー」だと思った。彼女の動きと音が一体化したときにそれは単なる楽曲の再現ではなく、新たな「作品」の提示になりうる。それくらいのポテンシャルは秘めているか、と。白い枝をツノのように生やして黒のスパンコールのタンクトップに黒のショートパンツ(スカート!?)で全身を使って動き回る彼女と連動するライティング、その躍動感とは正反対にギターの森雅樹や他のバックメンバーは舞台の大道具のように静かに、ひたすら演奏に集中していた。


ただ、新しいアルバムが出て一ヶ月か・・・。いや、多分そんな事は関係ないのだと思う、リスナー自体がこのアルバムの曲に戸惑っているのかも。(当然)新しいアルバムの曲を中心に構成されたライヴ故、(特にLive前半は)舞台とフロアとの間に距離があった感じは否めない。その距離感を感じて焦れたのかどうかは判らないが、彼女が曲の合間に「盛り上がってきた、盛り上がってきた」と言った事や(自分自身が、なのかも知れないけど、はっきりいってそんな事には関心ないし、口にする必要も無いと思う。)「Hey!Hands up!」という直接的な煽りや手を振り上げる動作や手を左右に振る仕草を求める・・・(というよりもなんだか「盛り上がるライヴのためのナビゲート」って感じもしなくなかったけど・・・としたら客側の戸惑いは相当のものだったのだろう)は正直鬱陶しかった。(私だってハタチ位まではそういうのが逆に好きだったし、その一体感に酔う感じがライヴの醍醐味だと思っていたのだけど。)そういうのもライヴパフォーマンスのテクニックの一つだろうし、そういうのが似合うミュージシャンもいるけど、エゴは別にいいんじゃないか?好きに感じて好きに動いて、でもその音とパフォーマンスを同じ時同じ場所で共有している人間が共通した感情を持った時、その手の所謂「一体感」ってやつが自然に生まれるんだと思うんだけど。客席との温度差や距離を詰めようと必死になっている感じがしてちょっとあれはいただけなかったなあ、というのが私の感想。


それはメンバーもおそらく感じてたのだろう、アンコールで優雅且つけばけばしく淫靡にも見える赤い羽根を頭に着けて来た彼女がすねたように「新しいアルバム、聴いてくれてます?・・・なんや・・・皆古い曲やったらめっちゃノルのにさあ・・・アルバムほんま頑張って作ってんで・・・。」(←全部関西弁でお願いします)とぼやいていたのが(ここまで正直にぶっちゃけられると逆に)可愛かった。


ライヴの「音」としては、十分且つ安定的な実力を感じた。ただ、アルバムを聴く限りもっと伸びそうに予想していた中納良恵の声が予想を下回っていたのは敢えてそういう風にいじっていたのだろうか?(小さな小屋感を出すため?)それともなんばHatchの限界?それとも本人の実力?でも十分に楽しめた。
「くちばしにチェリー」や「PARANOIA」は今後彼らについて回る大きな枷にもなってしまうのだろう。この曲で俄然フロアの熱が高くなったし、LIVEで聴く良さの一つを判り易く持っている曲だと思うし。そして何よりこの曲でミュージックシーンの随分表の方へ出てくる事ができたのは事実だし。でもそれ故もっと普遍的で音楽性がひどく限定されない今回のアルバムのような曲が受け入れられないかもしれない、という皮肉。大きな枷。
でも私がこの日のライヴの中で一番よかったと思ったのは新しいアルバムからの『moonlight journal』だった。まさかこの曲が「Liveで聴くと素敵」な曲だとは思っていなかったからちょっと驚いた。


このレビューを書く間に「満ち汐のロマンス」「Night Food」「merry merry」と並べて聴いていたのだけど、まあ、リスナーが戸惑うのも無理ないだろうなーと思う。
(わたしが熱狂的なファンでもないからこんなに突き放したような言い方出来るのだろうけど。)


BGM: 満ち汐のロマンス   Night Food   merry merry