蔦の影。秋の陽の光。

私が子供の頃好きだったTちゃんと何故か共同生活している。彼は子供姿のままだ。他の友人も一緒に共同生活をしていて「Tちゃーん、缶入れる場所どこよー?」等と聞かれて困惑している。部屋には古いが立派なグランドピアノがある部屋がある。キラキラ星を弾いていたTちゃんはいつの間にか別の私の好きだったおとこになっている。「ドビュッシーアラベスク、今練習しているんだけど全然弾けない。」というとさらっと出だしを弾いてみせる。もっと弾いてとせがむと、それはとても美しくキラキラとこぼれるように音が部屋に広がっていく。そうだ、この人はいつも口が悪くて皮肉屋で、でもピアノは美しいのだった、と思い出す。目を瞑ったまま、次はベルガマスク組曲の「バスピエ」がいいと言うと「それは練習していないから弾けない。」とか細い声がする。目を開くとTちゃんになっていた。その後もTちゃんと彼はしょっちゅう入れ替わるのだが特に支障もなくストーリーは運び、私はその突然の変化を楽しんでいた。


と言う夢を見た。


多分全体的に幸福な夢といえるでしょう。昔好きだった(且つ嫌いにならなかったおとこ)出演「夢」。うーんいいかも。となりでねてるMさんは気分悪いかもしれませんが黙ってればわからないのでこの際これ位は許してもらいましょう。
Tちゃんは、問題なく順調に行っていれば今ごろ京大病院の研修も解けて医師として活躍している事だと思います。昔の百万遍の住所は知っているのですが、きっと引越ししてるだろうから、今度年賀状をご実家にでも送ってみましょう。
彼は幼稚園から私と一緒で、聡くて賢くて優しくて公平で分別があり、カトリックの幼稚園に通っていた私は「聖者みたいなひとだ」と思っていました。そんな彼が小学校の時に唯一百点が取れなかったとき、クラスの皆は単純に驚いて「あれー!T百点じゃないよ!」「どうしたんだろ?」とクラス中ざわつく程になったのです。そのときに聖人君子のTちゃんはみんなに珍しく大声で「ぼくだって百点取れない時だってあるっ!」と言って涙を浮かべて教室を飛び出して行きました。残されたクラス中静まり返り、「Tに悪い事をした」と本当に心から皆で後悔したのです。それ位Tちゃんは皆に好かれている、本当にいい子でした。先生に連れられて帰ってきたTちゃんは皆にごめんと謝られ、いつもの笑顔でいいよ、気にしないで、と応えていました。女の子の中には泣きながら謝る子もいました。私も何て酷い事をしてしまったんだろう、と彼の心の内を想像し、そしてすぐに赦せる彼は何て凄い人なのだろうと思いました。
今思うといいクラスですねえ。彼には悪いけどいいエピソードだと思います。時々何かの拍子に思い出してはちょっと切なくなります。でも、今だから思うけど、あんなに「いい子」にしてたらとても辛かったんじゃないかなぁ。しかも(私が知る限り)彼を取り巻く皆がそれを望んでいたし、当然だと受け入れていたし。それでも、あの頃のままに、患者を思いやるいいお医者さんになっていてくれたら、と願っています。


月の光 ?ドビュッシー / ピアノ名曲集  昔を懐かしみながらのBGM:ドビュッシーピアノ曲集』
勿論「2つのアラベスク」とベルガマスク組曲を聴くために。
ちなみに持っているのはこのCDではないのですが(すみません、見つかりませんでした)内容が一番かぶっているためこれを紹介いたします。音は聴いていないので私の保証はできません。ごめんなさい。私が持っているのはピアノの先生から借りっぱなしになっているものです。(先生ごめんなさい。)