今日の写真:銀閣寺道の素敵なレストランにて

kuma-neko2005-10-31

少し肌寒い中、ストールをかけて、木漏れ日を浴びて、白ワインを。ムール貝のバターソテーはガーリックが効いていて、刻んだフレッシュトマトがほんの少しの酸味を足していて、素敵なソースになっていました。もちろん、バゲットを頼んでソースでもう一杯ワインをいただきました。アツアツで湯気の立つバゲットについてきたバターは、パンにつけて(…というか、パンよりバターのほうが大きかったから殆どバターを食べているようなものだったのだけれど…)口に入れるとじんわりとろけて、ある瞬間に脳天に届くように鮮烈においしくなる。江國香織じゃないけれど、「このバターは私の骨をつやつやにするのよ。」と呆れるMさんにとぼけて言って、その殆どをたった半切れのバゲットで食べてしまうのでした。
何だかとても久々な気がした、2人きりのデート。大好きな、京都で。

 ふいにカロリーが頭をよぎることも、ないとは言えない。でも、私はすぐに、その軟弱な考えをふり払う。こんな贅沢な、こんなに幸福なバターは、たぶん私の体内で、骨をつややかに輝かせる働きをするだろう、と、考えたりする。
 今年祖母が、三年前に父が、それぞれ逝ってしまったので、最近二度火葬場にいったのだけれど、いつか私が死んだら、きっと火葬場の人が骨を見るなり驚くだろう。丈夫で、白く、つやつやしているはずだから。「贅沢なかただったんですね」火葬場の人は、そんなふうに言うかもしれない。
 幸福な食べ物というのは、たぶん、そういうものなのだ。

泣く大人 江國香織『泣く大人』 Ⅰ 雨が世界を冷やす夜 「贅沢なかたまり」より