フェルメール「画家のアトリエ」〜栄光のオランダ・フランドル絵画展〜

主催:読売新聞の公式HP→http://event.yomiuri.co.jp/2004/S0178/top.htm  


昨日、神戸市立博物館まで行ってきました。
内容よりも観賞方法で面白かった事が。


最初はなんの気もなく観賞をスタートしました。周囲の人々の手には小冊子が。ああ、そういえば入口にガイドブックがあったなあ、と思い出しましたが、注釈無しに観て何か感じられればいいか、と思ってそのまま観賞を続けました。
ところがこの絵画展、通常の展覧会と違って、殆ど注釈がないのです。あるのは作品名と作者、製作年月日の掲示だけ。ぐるっと一周するのにさして時間もかかりませんでした。
出口近くでぼーっと考え事をしていたMさんが言いました。
「普通の絵画展と違って何の解説もなかったでしょ?そのせいか、なんかちょっとよくわからなかった。とすると、私達は理屈で絵を観ているのかなあ。」
2人で黙り込んで、とりあえず例のガイドブック(100円です)を買って美術館の古くさーい歴史感じる喫茶室で落ち着く事にしました。(本日の写真)
紅茶とコーヒーを飲みながら、ガイドブックをぱらぱらめくりましたが、面白い事にガイドブックだけ読んでも絵がいまいち浮かんできません。んんー。


ガイドブックを片手にもう一周する事にしました。
(構造的にそれは可能で、恐らく、ですが違法ではないと思います。)


ガイドを見ながら絵を観ると目が覚めるように納得していきました。
例えば「ウェヌスから立ち去るバッカスとケレス」という作品は、ケレス(ローマの農耕の女神)とバッカス古代ギリシャの葡萄酒の神)に置き去りにされると、ウェヌス(ヴィーナス)は凍える」=「パンと葡萄酒がなければ愛は冷める」という古代ローマの劇作家・テレンティウスの喜劇「宦官」を絵解きしたもの、だったり。
ただの美しい花の絵と思っていた作品(「小さい花卉画ー陶製壷のー」)の花は、実は急速に枯れしおれていく意味からこの世の移ろいやすさの象徴とされており、また、机の上の根こそぎにされたシクラメンやコイン、指輪は、生のはかなさ、現世の富の空しさを暗示しているものだったり。
(なんと私はこのガイドを読むまで机の上にシクラメンやコインや指輪が「あること」にすら気付いていなかったのです。嗚呼!)

16世紀、17世紀のネーデルラント*1の作品を集めてありますので、当然宗教色が強く、また、寓意をもった作品や絵解きしてあるものが幾つもあるので、背景にあるキリスト教や古代神話や世界史(その当時の世相含め)に造詣が深い人でなければ、ガイドブック無しではかなり苦しかったと思います。


それとも、なくても読めるくらいの教養が標準なんでしょうか・・・。う・・・。


ということで、2度目は発見の連続。の観賞でした。
中には一度目には見た覚えのない絵があったり・・・。(だめ具合も極まってます。)


ということで、自分の無教養さとこれからの絵画の見方を考えさせられた展覧会でした。


ラヴェル:スペイン狂詩曲  今朝のぼんやりBGM:ラヴェルボレロ、スペイン狂詩曲、亡き女王のためのパヴァーヌetc』
ラストのボレロで覚醒。

*1:現在のオランダ・ベルギー・ルクセンブルクの三国がほぼ該当、とのこと。私は世界史も苦手です。