影の上を悠々と横切る鳩達

弟が祖父に怒られている。祖父にあてた手紙の表現が拙かったらしい。見せてもらうと、「・・・皆さんで頂いてください。」と書いてある。なるほど。うーん、おじい様のお怒りも尤もだが、この子はアホだから(特に文章を書くなんて。)そこまで怒らんで、教えてやればいいのに、と思う。「こんな文章を書くような頭で会社が経営できると思っておるのか!」と祖父はかんかんだ。弟は怒られているので神妙にうなだれたポーズをとっているが多分内心は一体何処が間違っているのかも解からずにきょとんとしているのだろう、と思う。だってまだ5歳なんだから。


という夢を見た。



祖父は普段は穏やかで、寡黙で、滅多に感情的になりませんでした。怒りのピークもかなり高めに設定してあるようで滅多に怒りませんでしたが、いざ怒るとどうにもならない位恐ろしかった。昔の人らしい、のかな。
祖父は死に間際まで弟を傍に呼んで「会社の事を頼む」と言い続けていました。弟は自ら「その道を選んだ。」と言っていますが、あの状況で(バカだけど優しさだけがとりえの)彼が、『祖父の呪縛』から本当に自由になって選択したのだろうかと、思い出しては不安になります。が、彼は気丈に(?)そう言い張るので、私にはもう信じるしかありません。彼はもう5歳の子供ではないのですから。


そして祖父の夢を見て、また少し泣いてしまった私こそ、いつになれば自由になれるのか。死と看取りも含めたそれまでの記憶を受け入れ、なにか別の感情に昇華させられる日がいつになったら来るのか。もう十分に時間は過ぎたと思うのに、祖母へも祖父へも、悲しみや懺悔や、そして少し恨めしい気持ちや、そんな感情の方が強い私は、泣いてしまった後に、祖父母へ「申し訳ない」といつも思います。
時々夢は残酷です。