空だけを見ると気が遠くなる。

私は小さな支社で営業の仕事をしていた。その会社は営業成績至上主義の、数字をうるさく言う、そういう「営業」主体の会社だった。会社の壁には年間・月間の売上目標と実績の棒グラフが個人ごとに載って貼り付けられており、「絶対やり抜く!」等と頭の悪いスローガンのようなものが太い字で書いて張ってあった。入社一年目の私はいろんな疑問を持ちながらもやっと期末を迎えようとしていた。携帯が鳴った様な気がしたのでこっそり見てみると、『サルオヤジ』という登録名の着信履歴が残っていた。(誰だったっけ、でも多分コンパかなんかで会った男で、人数あわせのために今ごろ連絡してきたんだろう、ほっとこ。)と思う。次の瞬間、会社のドアが勢い良く開けられて、ナイナイの岡村を歳食わせたような顔をした、普段は統括室にいるマネージャーが、紙切れを手に入ってきた。「お前ら、喜べ、勝ったんだよ、一位だ、個人成績でも上位三位をこの支社で独占してるぞ!」といきり立って言う。わたしは(あ、『サルオヤジ』はこいつだった。)と急に思い出す。その男は私に「おい、OO、(←私の名前)お前今月3300万でトップだぞ、よくやったな、これでXX(←以前働いていた同グループの部署)の成績なんて一気に抜いたな。」という。私は昔の職場が大好きだったので、そういう比較対象にされた事にムカッと来たが、つくり笑いをして「XXには育ててもらったご恩がありますが、やはり今の仕事で実績を残したいですから。」と心にも無い事をすらすらと言ってやると、単純なその男は「そうか、さすがだなお前!」と言って抱きついてきた。(これってセクハラじゃねーの?)と思いながら嬉しそうなフリを続ける。(入社一年目の奴にトップ取らせんなよ、ついでに一年目だけの支社ってどうなんだよ。)と、『サルオヤジ』に抱きつかれている気持ち悪さと会社の気持ち悪さにいい加減うんざりしていた。


と言う夢を見た。


これは以前私が勤めていた会社が舞台でした。まあ、実際にあった事の再現ではないですが、ディティールはほぼ同じ。一年目だけの支社はありませんでしたが、二年目1人だけの支社、は実在していました。ただ、以前働いていた部署、は現実には後で働く事になった部署、で、この営業会社には実際には入社直後3ヶ月ほどしか在籍しませんでした。その3ヶ月も2ヶ月間は数字落としてたし。後で入った部署では3年ほど勤め、一度も数字を落す事無く、そこには本当に育ててもらったし、いろんな面でお世話になったと今でも感謝をしています。そこでもいろんな疑問を持っていた事は確かですが、それはワンマン経営だったグループの誰もが一度は感じざるを得ない所から疑問から発せられていたり、その部署の独自性からどうしようもなく発せられていたものだったりしたので、数字で人格まで判断するような最初の部署から上手い事異動の命令が出て、小さな、名も無いような海外事業部の一部署に飛ばされた時は、やっと抜け出れる、と思ったものです。
まあ、結局その会社も辞めてしまったので今はどうなっているのか知る由もありませんが、CMなどを見かけると、あの上司どうしてるのかな…とか、色々思い出したりします、たまに。
あ、そうそう、私所謂コンパって奴には一度も行ったことないんです。一度経験してみたかったなあ。