ショパンのワルツ

実家のオーディオで久々に苦行を行いました。それは、大学時代の演奏を聞くこと。
私はピアノ研究会という名の団体に所属しておりまして。その中身は、ピアノが置けない大抵の下宿事情を持ち合わせた人々がサークルを作って(ピアノがおいてある)教室を使用できるようにしたもの。要は、ピアノが弾きたい人が何とか弾ける様に考え出した苦肉の策。好きな時にふらりと現れては練習したらいなくなる人、楽譜の交換をする人、好きな作曲家や曲について熱く語る人、一日中おしゃべりをして教室にこもっている人、お菓子を持ってお茶をする人(本当は飲食物の持ち込み禁止)、テスト勉強をする人、いろいろ。大学に入るまでピアノを触った事が無い人、楽譜が読めない人から様々なコンクール入賞経験者まで幅広く、幽霊部員も含めると100人超というそこらの下手な公認団体よりも大規模な組織でした。
年に一回、きちんとしたホールで、きちんとしたピアノ(スタインウェイのフルコン、無論直前には調律あり)で演奏会をやりました。百何十人がエントリーしてセレクションを行い(初心者含む百何十人の演奏を聴く・・・しかも選出しなくちゃいけないから寝ているわけにもいかない・・・というのは、この会一番の苦行でございました。)毎年十数名が舞台に立てるわけです。(しかも一応チケットを販売するから聴く人にお金を頂くのです。)プレッシャー。
私は大学3回の時にこのステージに立ちまして。ショパンのワルツ・ロ短調、作品69-2。なんとトップバッターでした。久々にお金を払ってレッスンを受け始め、どうにか仕上げたものの本番は2度(正確には3度かな…。)のミスタッチ(どこでどう間違えるかも覚えている)、そして聴けば聴くほどショパンじゃない演奏。実は臆病な私の性格が現れたのたのたびくびくした、まあ、オープニングには無難かもしれないけれど面白くも無い演奏。
本当は聴くのは嫌なのですが、大阪と実家に一枚づつライブ演奏のCDがあります。時々こうして聴いて悶絶します。多分音楽をやる人にはMが多いのだと思ったりします。実家のオーディオは音がいいから尚の事痛い…。
この時に一緒に弾いた、後輩のシャコンヌが忘れられません。素晴らしかった。バッハ作曲、ブゾーニ編曲のシャコンヌ。練習の時から聴くのが好きで、胸が締め付けられるような音で、幸せで、そして一日一日音がはっきりと進化して行くのが良く分かり、よく譜めくりをかって出ていました。そして毎日感動していました。だから、彼女のシャコンヌも音が頭の中で再現できるくらいには聴き込んでいます。
今思えば、あんなにゆったりとした陽だまりのような幸せな時間もあったのだな、と、この演奏の記録を再生するたびに、その感覚が同時に私の体に再生されてなんとも切なくなるのです。
・・・歳かな。

BGM:アマチュア大学生の定期演奏会
ショパン・ワルツロ短調・作品69-2---J.S.バッハ=F.ブゾーニシャコンヌ無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調・BWV1004)---ショパンポロネーズ・第七番変イ長調・作品61「幻想ポロネーズ」など。