におい

赤、いろんな赤、赤、赤。


部屋から出ると、雨のにおいがみっちりと充満していました。濡れた葉のにおい、濡れた土のにおい、濡れたアスファルトのにおい。車が雨水を跳ねていくしゃああぁという音、葉を叩くぱつぱつぱつという不規則な音。
月のものがやってくると私の鼻はおかしくなります。ずっときりきりした、乾いた、渋い、血のにおいが体の中からして、ずっとつきまとって、(それは実際に周囲に振りまくものではなくて、私の鼻孔内で私だけが感じられるにおいなのです。)いろいろなもののにおいも味もめちゃくちゃになります。が、それを押しのけて圧倒するような雨のにおい、降りたての雨のまちのにおい。
この時期、私はたくさんの感覚を使わざるを得ないように追い込まれます。鈍い腰の痛み、下すお腹の痛み、そこに存在する事を認識せざるを得なくなる、ありえないような激しい子宮の痛み、勝手に排出される大量の赤。その気持ち悪さ。全部が一気に押しかけて押し潰される。
感覚の塊になった私は、いつもより理性が作動しなくて、八つ当たりと不機嫌を正当化する自分をちらりと苦々しく思ったりするのがせいぜいなのです。
このまま血の海で沈む夢を見るより、雨のにおいに押し流される方がずっといいのだけど。