逃避行

冷たい雨にぬれる


結局ベッドに戻って、ふかふかの羽毛布団とパイル地の冷たくなりにくいシーツの間に滑り込んだのです。中はまだ生ぬるくて、私の体温が残ってて、切り離されて離ればなれになった昔の自分の一部にまた出会ったようで少し奇妙だったけれど、すぐに溶けてまた私に戻って、そしてベッドもシーツも布団も私と一体化して私はもうほとんどベッドの一部でしかないのです。
いま一番安全なのはここだ。いまはベッドだけが私を守ってくれるし、ベッドは私を苦しめないし、傷つけない。
目の下までかぶった布団から、なれた、良く知っている匂いがします。ここなら安全、隠れていよう。眠って逃げてしまおう。


それで、あなたは何から逃げているの?